【社説①・04.03】:トランプ氏演説 混乱収束へ責務果たせ
為政(偽政)者たちに荒廃させられた空疎で虚飾の現代社会 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.03】:トランプ氏演説 混乱収束へ責務果たせ
トランプ米大統領がイラン情勢について演説し、「かつてない大きな勝利を収めた」と一方的に宣言した。米国民に向けた異例の呼び掛けである。
核兵器保有を阻止したというが、昨年6月の攻撃ですでに壊滅したという米国家情報長官の証言と矛盾する。泥沼化の懸念の高まりと秋の中間選挙を前にした支持率の低下で追い込まれたというのが実情だろう。
ホルムズ海峡については「石油を米国から買うか、中東の石油に頼る国が自分で手に入れるべきだ」と述べた。米国とイスラエルの攻撃で世界経済と生活を大きな混乱に陥れた自覚はあるのか。無責任極まりない。
威圧によって幕引きを急ぎたいのだろう。イランとの交渉については「合意がなければ発電所などを攻撃する」と述べ、今後2、3週間は徹底的に攻撃する姿勢を示した。
自衛権を逸脱するイランへの先制攻撃は国際法違反だ。即時停戦し、対話によって混乱収束と地域安定を図ることが米国とイスラエルの責務である。
トランプ氏は「戦略的目標は達成されつつある」と自賛して先行きの不透明感の払拭を図ったが、原油先物価格は急騰し、株式市場も下落した。石油関連施設の回復も見通せず、世界の動揺はむしろ広がった。
今回の攻撃は核開発阻止や体制転換と目的が変遷し、根拠も乏しい。戦略の欠如も著しく、米国をけしかけたと指摘されるイスラエルの責任も問われる。
最高指導者らの殺害、学校や核関連施設の攻撃など国際条約に反する行為も不問に付すわけにはいかない。終戦の保証や賠償などイランの求めに対し、米国は誠実に向き合うべきだ。
イランは徹底抗戦の構えを崩していない。パキスタンなど仲介に動く周辺国を軸に交渉開始の環境整備を急ぐ必要がある。
今回の攻撃では基地使用を拒否した欧州と米国の亀裂が一段と深まった。トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)離脱も示唆するが、覇権主義的国家を利するだけだ。軍拡競争の激化を招いてはならない。
国際世論が米国とイスラエルに厳しい視線を向ける中、日本政府の対米追従一辺倒の姿勢が際立つ。原油高対策でも、イランとの交渉による安全航行確保や需要抑制策を先送りし、調達先の多様化でも後れを取る状況は改善するべきだ。
力による現状変更の試みをこれ以上追認するわけにはいかない。日本は国連や中堅国の結束を促し、法の支配を守る行動を起こさなければならない。