【社説①・04.30】:安保3文書会議 力の増強止める議論を

【社説①・04.30】:安保3文書会議 力の増強止める議論を

 為政(偽政)者たちに荒廃させられた空疎で虚飾の現代社会 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.30】:安保3文書会議 力の増強止める議論を 

 政府が目指す安全保障関連3文書の年内改定に向けて有識者会議が議論を始めた。防衛費の増額目標のほか無人機、人工知能(AI)を活用した「新たな戦い方」などを検討する。
 高市早苗政権は防衛費を昨年度中に国内総生産(GDP)比2%まで引き上げ、本年度予算では初めて9兆円台とした。際限ない増額がなお必要なのか。中身を精査して膨張を止めることこそ本来求められる役割だ。
 首相は初会合で「改定は国家の命運を左右する。防衛力の抜本的強化を進める」と述べた。政府は敵基地攻撃能力(反撃能力)保有を決めた現行の3文書に沿って長射程ミサイルの整備などを進め、平和憲法に基づく専守防衛を形骸化させている。
 今月には殺傷能力の高い武器の輸出全面解禁に踏み切ったばかりだ。さらに防衛力強化を進めれば、平和国家の理念を捨てたとの批判は免れない。力に力で対抗する姿勢は地域の緊張を高める。増強一辺倒の姿勢に歯止めを掛ける時だ。
 政府は3文書を安保政策の基本方針と位置づけており、首相は改定を1年前倒しした。前回2022年の改定では23~27年度の防衛費を総額43兆円に増やす計画を決め、今月からこれに沿って防衛増税も始めた。
 だが近年、予算計上しながら使い切れなかった不用額は年間1千億円に上る。
 増額には米国の意向も背景にあるという。トランプ米政権はGDP比3.5%を求めているとされ、その場合、年20兆円を超す巨費となる。さらなる財源確保は難しい。削減へと切り込む姿勢が必要だ。
 会議では首相の掲げる継戦能力や経済安保、防衛産業の強化も焦点となる。
 メンバーの山崎幸二元統合幕僚長は初会合後、非核三原則の見直しについても「会議の目的の中において議論すべきものだ」と述べた。
 非核三原則は、唯一の戦争被爆国である日本の国是だ。見直しは周辺国を刺激し、かえって核軍拡競争を加速させるリスクを高める。到底認められない。
 メンバーには元外務・防衛官僚や元自衛官、防衛産業関係者らが名を連ねる。多くが防衛力強化に前向きとみられ、人選の過程も不透明だ。政府方針を加速させるだけなら有識者を集める意味がない。慎重論を含め多様な意見を聞くべきである。
 本来なら激変する国際秩序に向き合う外交戦略をはじめ、国のあり方を巡る幅広い議論が必要だ。国会の関与のない密室の会議で決めていい話ではない。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2026年04月30日 04:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。